2019.03.23 古いソファが新しく生まれ変わるまで。ソファの修理工場へ行ってきました。

暮らしの中心となるソファは、長年使えば使うほどに愛着や思い入れが強まりますよね。
思い出が増える一方で、汚れやへたりがどうしても増えてきてしまうものです。
 

お客様より、長年使いこんだアイラーセンのソファを修理してほしいというご依頼をいただきました。
「大切なソファだから買い替えじゃなくて、直してこれからも使いたい。」
私たちスタッフにとってソファを購入していただくことはもちろん嬉しいですが、
こんな風に言っていただけることも非常に嬉しく思います。
 
早速お客様宅よりソファを引き上げ、
ACTUS経由でソファの修理工場へ。
こんな機会は滅多にないので、
ぜひ張り替えの様子を見てみたい!と
ダメ元でACTUSへお願いしたところ、なんとか工場取材の
許可をいただくことができました。
職人さんのスケジュールを調整していただき、
神奈川にある「東加工所」へ見学に行ってきました。
 


今回案内をしていただいた東加工所の大平さん。
通常2日間かかる作業のところ、取材のために
1日で終わるよう調整していただきました。
本当にありがとうございます・・・!!
 
それでは、ソファが新しく生まれ変わるまでの工程を
順を追ってご紹介させていただきます。
 


 

01.カバーをはずす

 
工場の中へお邪魔させていただくと、
すでに引き上げたソファが用意されていました。
 

今回お預かりしたソファはアイラーセンの
ストックホルムソファ。
スタイルのスタッフ愛用率No1のモデルです。
10年経っても座り心地が変わらず
ソファの耐久性に定評のあるアイラーセンですが、
こちらはかなり使い込まれている様子。
早速、作業がスタートしました。
 

まずはソファの本体を逆さまにして、
脚を外したら底面に貼られている
不織布を剥がします。
 

剥がし終わるとソファの裏面はこんな感じ。
実際にフレームを見るのは私も初めてでしたが、
無垢のパイン材で作られた躯体そのものは
全く痛んでおらず、クオリティの高さに驚きました。
 

パーツの刻印からソファの製造年月日が判明。
2000年6月22日ということは、
なんと18年以上も前!!!
スタイルの創立が2000年の4月なので、
オープン間もない頃に作られたソファだったんですね。。。
そして、18年以上大切に使っていただけたことにも感動です。
 


底面の不織布に続いて、本体のカバーを止めている
タッカーを1つずつ抜いていきます。
今でこそアイラーセンのソファは
マジックテープでカバーリング仕様ですが、
生産工場がデンマークだった当時は
張り込み式だったんですね。
 

タッカーを全て外し終えたら、カバーを外します。
 


カバーの中身はこんな状態です。
フレームを覆うウレタンが全体的に変色し、
ところどころ剥がれてしまっています。
これを見ると、普段の使用で
肘掛への負荷が大きいことがわかります。
 


 

02.ウレタンを剥がす

 

ヘラを使ってウレタンを剥がしていきます。
さすが職人技、ウレタンや接着剤の跡をほとんど残さず
綺麗に剥いでいきます。
 

使っている道具はこれ。
ウレタンを剥がす箇所によって、
異なる幅のヘラを使い分けているのだそう。
 

削った時に出た接着剤の粉や埃を、
掃除機で吸引します。
 

ウレタンが全て剥がし終わりました。
これがアイラーセンソファの骨組みです。
 


 

03.ウレタンを貼る

 

剥がしたウレタンを元に型をとり、新品のウレタンを裁断します。
ウレタンにも7つの種類があり、密度や柔らかさが異なるそうで
背・肘・側面など、部位によって異なるウレタンを選びます。
 

ウレタンを貼り付けるのに使用する接着剤。深い緑色が特徴です。
色がついている接着剤を使用する理由は、
「吹き付けたときに付けた部分と付いていない部分が一目でわかるから」
だそう。
 

この接着剤を木フレームに直接
ムラが出ないよう丁寧に吹き付けていきます。
色がついていることで、確かにとてもわかりやすいと思いました。
 

正確に切り出されたウレタンを、フレームに沿って貼り付けます。
 

背の部分には。なんと3種類ものウレタンが使われていることがわかりました。
1mmの誤差もなく、正確に貼り合わされています。
 


背面・側面・背もたれ部分と、
次第にソファフレームがウレタンに包まれていきます。
肘掛内側の下部分には、カバーリング用のマジックテープを
タッカー留めする為の板材が新たにはめ込まれます。
 

ウレタンの張り作業が完了しました。
真っ白なウレタンに包まれた姿は新品そのもの。
ソファが生まれ変わるまで、あと一息です・・・
 


 

04.カバーを付ける

 


はじめに、ウレタンを保護するための白いカバーを取り付けます。
これがあることで、紫外線によるウレタンの変色や型崩れを防いでくれます。
 


底面の生地も新しいものに張り替えるとともに、
カバーリングタイプに対応させる為マジックテープも取り付けます。
ここにはタッカーを惜しみなく打っていきます。
 

そしてついに、アイラーセン のカバーを被せる工程に入ります!
同じサイズのものですが、18年以上も前のフレームに
今のカバーがぴったり入るかどうか・・・
一瞬、職人さんたちの間に緊張感が生まれます。
 

作業を見守る大平さんもこの表情。
 

アイラーセンのソファカバーはサイズぴったり
に作られており、負荷が偏ると破れてしまう恐れもあるので
慎重に作業を進めます。
 

角を合わせて、偏りがないようにカバーを並行に下げていきます。
 

あともうちょっと・・・
 

無事に完成しました!
同じサイズとはわかっていても、やはり最後の工程では
わたくしも緊張感を感じました。
 
実際にこの目で張り替えの様子を見ることができ、非常に面白かったです。
今回の作業にかかった時間はおよそ3~4時間と、
想像以上のスピードだったことにも驚きました。
 
ウレタンや生地は傷んでしまっていても、
アイラーセンのフレームは本当に丈夫に作られていますので
長年使い込んでも、このように中身を入れ替えるだけで
新品同様に蘇ります。
 
古くなったら買い替えるのではなく、
直しながら永く使うことも選択肢の一つとして捉えてみてはいかがでしょうか。
そうして、次の世代へ受け継いでいくことも素敵ですよね。
 
 


 
 

後日、修理したストックホルムソファをお客様宅へ納品。
18年使い込んだソファとは思えないほど綺麗に生まれ変わり、
お客様にも大変喜んでいただきました。
あらためて、家具を大切に永く使うことの素晴らしさを
実感しました・・・。
 
今回取材にご協力いただいた東加工所のみなさま、
そして、アポイントを取ってくださったACTUSの伊藤さま
本当にありがとうございました!
 
 

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